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1.特別受益とは?
特別受益とは、相続人の中に、被相続人から結婚のための費用や生計の資本のために贈与や遺贈を受けている場合をいいます。
具体的相続分を計算するときには,個々の相続人の相続分を被相続人が有していた財産に乗じて計算します。
しかし,相続人の中に亡くなった被相続人から金銭の贈与を受けるなど,利益を得ているような場合に,公平の観点から修正することができます。
それが特別受益といわれるもので,相続分の前渡しといえるだけのある程度まとまった財産が贈与されていることが必要です。




2.特別受益の対象となるもの
①結婚のための資金
持参金や支度金など結婚のための資金の贈与を受けていた場合は,特別受益となる可能性があります。
金額がどのくらい大きいか,被相続人の資産の程度,生活状況などから,特別に利益を得ていたか判断されます
②不動産の贈与
例えば,子どもが家を建てる必要があるので,土地を贈与したような場合です。 不動産は通常高額であるので,特別に利益を得ていたと判断されやすいでしょう
③金銭,貴金属,有価証券などの贈与
金銭などの贈与は,典型的な特別受益といえるでしょう
特別な利益を得ていたと言えるには,被相続人の資産や生活状況からして,小遣いや謝礼とはいえないほどに高額であるかが特別受益にあたるかの判断要素になります。



3.特別受益の期間
特別受益の対象とされる贈与には期間制限はありません。



4.特別受益の基準時
特別受益は、相続開始の時点を基準として評価されます (最判昭51.3.18民集  30巻2号111頁)。
例えば、 贈与を受けたときに1000万円の価値があった建物が,相続開始時には2000万円の価値があった場合は,2000万円の特別受益があったものとして扱われます



5.特別受益の効果
特別受益に該当することが認められると,「持戻し」が認められることになります。
「持戻し」というのは,被相続人が亡くなったときに有していた財産に特別受益に該当する財産を戻すことをいいます 。つまり相続時の財産に,以前に贈与した財産を加えるのです。
例えば,1000万円の贈与を相続人の一人が受けていて,相続開始時の財産が2000万円だった場合に,1000万円を戻して,相続財産が3000万円であることにするということです。そして,
3000万円を相続分に従い分けた上で,特別受益を受けた相続人は, 特別受益分を控除します。
この「持戻し」をすることにより,特別受益を受けていた相続人の具体的相続分は減少し
その他の相続人の具体的相続分は増加することになります。
なお,遺贈については,持戻しはありません。相続開始時の相続財産から支出されるからです。

6.特別受益の計算
特別受益があった場合の計算方法は,以下のようになります。
ⅰ  みなし相続財産


相続開始時における相続財産の額 +共同相続人が受けた特別受益の額
ⅱ 具体的相続分
  ①  特別受益者の相続分
みなし相続財産×特別受益者の法定相続分-特別受益の額


  ②  特別受益者以外の共同相続人の相続分
みなし相続財産×特別受益者以外の共同相続人の法定相続分


<具体例>
夫には妻と娘、息子がいる。
夫が亡くなったとき、Aさんは3,000万円の財産を有していた。
夫は,生前息子に1,000万円贈与し,娘に500万円遺贈した。
この場合に具体的相続分がどうなるでしょうか?


Q1 父が亡くなりましたが,財産を貰った者がいます。この場合の相続分も同じなのですか?
A:特別受益にあたり具体的相続分が修正される可能性があります。詳しくは,上記1を参照



Q2 特別受益が認められた場合どうなりますか?
A:算定方法について,上記5.6を参照



Q3 代襲者へ贈与した場合は特別受益となりますか?
A:代襲が発生する前に贈与がされても、その時点では代襲者は相続人ではありません。
したがって、その贈与は,特別受益に該当しないことになります。
しかし,代襲が発生した後に贈与がされた場合には、贈与を受けた代襲者はその時点では、
相続人であるため、その贈与は特別受益に該当することになります。
※代襲相続については,該当箇所を参照してください。



Q4 養子になる前の贈与は特別受益となりますか?
A:養子となる前は,相続人ではありませんので,特別受益には該当しません。
しかし,養子縁組をするためにされた贈与の場合には,実質的に見て特別受益と評価する余地はあるといえるでしょう。
婚姻の場合も同様に考えることが出来るでしょう。



Q5 生命保険金を受け取った場合特別受益となりますか?
A: 生命保険金は、被相続人と保険会社の契約によるものです。被相続人が亡くなったときに、相続人が受取人として保険金を取得します。
 したがって,生命保険金は特別受益には該当しません。
なお,最高裁判例によると,「保険金受取人である相続人とその 他の共同相続人との間に生じる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、同条の類推適用により、当該死亡保険金請求権は、特別受益に準じて持戻しの対象となる」されています(最高裁平成16年10月29日)。
この特段の事情の有無については、保険金の額、遺産総額に対する 比率など,諸般の事情を総合考慮して判断されます。



Q6 死亡退職金を受け取った場合特別受益となりますか?
A:死亡退職金遺族の生活保障という側面があることからすると,受給者固有の権利と考えられます。
したがって,特別受益の対象とはならないのが原則です。
ただ,特段の事情がある場合に例外に当たりうるのは,生命保険金と同様でしょう。